Nacti(ナクチ)読みものスマホを操作できない親の見守り

スマホは持っているけれど、操作はできない。
そんな親の見守り設定

iPhone と数千円のセンサーで、一人暮らしの見守りをどこまでできるのか。90歳を超えた祖母のために設定した記録です。うまくいったことも、足りなかったことも、そのまま書きます。

操作を求める道具は、操作できない人には効かない

見守りの道具を探すと、まず出てくるのは「毎日ボタンを押して無事を知らせる」「アプリを開いて体調を記録する」といったものです。よくできていますが、どれも本人がスマホを操作できることを前提にしています。

祖母は90歳を超えています。スマホは持っていて、設定もわたしがひととおり済ませてあります。でも、操作はできません。かかってきた電話に出るのも、画面のどこを触ればいいのか分からない。

ただ、話せないわけではありません。画面が点いて、こちらから声をかければ、普通に会話ができます。できないのは「触ること」だけです。ここが、この記事全体の起点になります。

この状態の人に「毎日ボタンを押してね」と頼むのは、実質的に「毎日わたしが電話して、押してもらう」のと同じです。それができるなら、そもそも見守りの道具は要りません。

なので、選ぶ基準はひとつに絞れます。

本人が何もしなくても成り立つか。 本人の操作が1回でも必要なら、それは「うまくいけば動く仕組み」であって、見守りではありません。

以下、この基準で選んだものと、見守りとは別の目的で入れたものを、順に書きます。

iPhoneを触らなくても、ビデオ通話に出られるようにする

効果あり・無料・設定は5分

iPhone には、かかってきた電話に自動で出る機能があります。アクセシビリティ(障害のある方向けの支援機能)の一部で、元々は手が不自由な方のためのものです。これを使うと、こちらから FaceTime をかけるだけで、相手が何もしなくても通話がつながります。ビデオ通話でもつながるので、顔と部屋の様子が見えます。

祖母のように「触れないけれど、話はできる」人には、これが決定的に効きます。画面さえ勝手に点けば、あとはいつもの会話が成立するからです。

思いがけない効きめもありました。ビデオ通話だと、お互いの顔色が見えます。こちらは祖母の様子を確かめられますし、祖母のほうもこちらの顔を見て安心できる。見守りのつもりで入れた設定でしたが、いまは祖母も親も、これを楽しみにしています。

設定の手順(見守られる側の iPhone で)

  1. 設定 → アクセシビリティ → タッチ を開きます。
  2. 通話オーディオルーティング の中にある 自動電話応答 を開きます。iOS の版によっては「タッチ」の直下に並んでいることがあります。
  3. スイッチを入れ、応答までの秒数を決めます。3秒前後がおすすめです。0秒だと、間違い電話にも即座に出てしまいます。
  4. 通話の音がスピーカーから出るよう、同じ画面で オーディオルーティング を「スピーカー」にしておきます。耳に当てられない相手なので、ここは必ず。
  5. FaceTime が使える状態か確かめます。設定 → アプリ → FaceTime がオンで、自分の連絡先が入っていること。

あとは、こちらから FaceTime のビデオ通話をかけるだけです。数秒で勝手につながります。

落とし穴

ここからが本題です。設定しただけでは、たいてい思ったように動きません。

起きること対処
知らない番号にも自動で出る。セールスや詐欺の電話に、本人の意思と関係なくつながります設定 → アプリ → 電話 → 不明な発信者を消音 をオン。連絡先に入っている家族からの着信だけが鳴るようになります。FaceTime 側にも同じ設定があります
集中モード/おやすみモードで着信が止まる。夜にかけたのに鳴らない、という形で気づきます集中モードの「通知を許可」に家族を追加するか、「繰り返しの着信」を許可しておきます
カメラが天井しか映さない。テーブルに置きっぱなしの向き次第です置き場所を決め、スタンドで立てておきます。これだけで、見える情報が段違いになります
本人が通話を切れない。切るのはこちら側の役目になります用が済んだら必ずこちらから切ります。切り忘れると、つながったままになります
電源が切れている・圏外・Wi-Fi が落ちていると、当然かかりません後述しますが、これは対処できません。この方法の限界です
これは、本人の同意なしにやってはいけない設定です。 こちらが電話をかけるだけで、相手の部屋の映像と音声が、相手の操作なしにつながる状態になります。家族であっても、事前に説明して納得してもらってください。話しても理解が難しい状態であれば、他のご家族の合意を取っておくことを勧めます。これは便利な裏技ではなく、プライバシーを預かる設定です。

LINE ではどうか

使えた・ただし組み合わせによる

「LINE のビデオ通話でも同じことができるか」は、よく聞かれます。うちの組み合わせでは、使えました。

鍵になるのは 設定 → 通話 → iPhoneの基本通話と統合 です。ここをオンにすると、LINE の着信が iPhone 標準の着信画面として表示されるようになり、自動電話応答の対象に入ります。オフのままだと通知が出るだけなので、自動では出てくれません。

ただし、iOS と LINE の版の組み合わせによって挙動が変わる可能性は残ります。見守りの土台にするなら、必ず自分の端末どうしで一度確かめてください。やり方は簡単です。

  1. 相手の iPhone を手の届かない場所に置き、画面を伏せてロックしておきます。
  2. 自分の端末から LINE のビデオ通話をかけます。
  3. 一切触らずに、映像がこちらに届くかを見ます。

届かなければ、その組み合わせでは使えません。相手が iPhone なら FaceTime に寄せたほうが確実です。LINE を使うのは、普段の連絡が LINE に寄っていて、そちらのほうが家族全員にとって自然な場合だと思います。

SwitchBotの温度計で、熱中症とヒートショックを防ぐ

効果あり・初期費用のみ・ただし Wi-Fi が要る

SwitchBot の温湿度計も入れました。これは安否確認のための道具ではありません。狙いは別で、夏の熱中症と、冬のヒートショックを防ぐことです。

年を取ると、暑さと寒さを感じにくくなります。 真夏でも「暑くない」と言ってエアコンをつけない。熱中症は、屋外よりも屋内で起きるほうが多いとされています。冬は逆に、暖かい居間と寒い脱衣所・浴室・トイレの温度差が、ヒートショックの引き金になります。どちらも本人の体感があてにならないところが厄介で、離れて暮らしていると、部屋が何度なのかを知るすべがありません。

温湿度計を置くと、離れた場所からいまの室温と湿度が見えます。しきい値を決めておけば、超えたときに通知が来ます。そして気づいたら、さきほどの FaceTime で声をかければいい。「暑いからエアコンつけて」と、その場で言えます。02と03は、この形で噛み合いました。

買ったもの

もの役割
温湿度計部屋の温度と湿度を測る。単体でも手元の画面には数字が出るが、それだけでは離れた場所からは見えない
ハブ(Hub Mini など)温湿度計の電波を拾い、インターネット経由でこちらのスマホに届ける中継役。これが無いと、外から室温は分かりません

設定はスマホのアプリから行います。温度のしきい値(例えば「28℃を超えたら」「10℃を下回ったら」)を決めて、通知をオンにするところまでやっておきます。

前提条件(ここで詰まります)

この方法には Wi-Fi が必要でした。 ハブがインターネットにつながって初めて、外から室温が見えます。つまり実家に回線が要ります。高齢の親の家には、そもそも回線が無いことが珍しくありません。「スマホは持っているが、家に Wi-Fi は無い」という状態だと、この方法は丸ごと使えません。引くとなれば、月々の費用がかかります。

もうひとつ、地味ですが重要な前提があります。

電池が切れると、通知そのものが来なくなります。 温湿度計は電池で動きます。切れると数字が止まりますが、こちら側には「今日は通知が無かった」としか見えません。暑くなっていても気づけない状態が、静かに続きます。アプリで電池残量の通知を必ずオンにしてください。

その他、細かい前提を並べておきます。

  • ハブの Wi-Fi は 2.4GHz 帯を使います。5GHz しか飛んでいない設定だとつながりません
  • ハブは常時電源が要ります。停電やブレーカー落ちの後、自動で戻るか確かめておくこと
  • 置き場所で数字が変わります。直射日光やエアコンの風が当たる場所は避けます
  • 費用はセンサーが1個数千円、ハブが数千円ほど。月額はかかりません(価格は変わるので、購入時にご確認ください)
  • 同じシリーズに開閉センサーや人感センサーもあります。玄関や冷蔵庫の開閉を拾う使い方もできますが、うちでは入れていません。どこまで置くかは、本人がどう感じるか次第だと思います

見守りサービスも探した

ここまでは、暮らしの環境を整える話です。肝心の安否そのものは、まだ何も見ていません。そこは既製の見守りサービスに任せるつもりで、ひととおり探しました。

結果から言うと、条件に合うものが見つかりませんでした。

まず、本人がボタンを押す前提のものが多い。毎日ボタンを押す、アプリを開いて記録する、届いた通知に答える。祖母には押せないので、01で立てた基準を最初から満たしません。

そして、月300円を超えるものが多い。機器のレンタルや駆けつけまで含む本格的なものなら納得できる金額ですが、通知が届くだけの機能に対しては高く感じました。

押せる人には良いものが揃っています。押せない人向けのものが、見当たりませんでした。

だから、自分で作りました

欲しかったものは、はっきりしていました。本人が何もしなくても、無事が分かる。それだけです。無いなら作るしかありませんでした。

手がかりは、消去法の先にありました。操作はできなくても、持ち運ぶことはできる。スマホを持ち上げる、持って歩く。その動きだけは、毎日起きています。

それを無事の印として使い、動きが途絶えたときだけ知らせる。そういうアプリを作りました。Nacti(ナクチ)といいます。名前は not activated(動いていない)から取りました。

使われていないときに、使えるアプリ。

ふだんは、存在を忘れていてかまいません。開かれないあいだも働き続けることが、このアプリの役目だからです。

  • 本人の操作は要りません。ボタンも、毎日の記録もありません
  • いきなり家族に知らせず、まず本人にそっと確認します。応答があれば、そこで終わりです
  • 眠っている時間帯は確認を始めません。夜中に動かないのは当たり前だからです
  • 送るのは「いつ動いたか」だけ。居場所の緯度経度も、画面の中身も送りません
  • 実家に回線が無くても動きます。スマホの通信だけで完結します

料金は、見守られる人だけ月150円にしました。見守る側は無料です。サーバーを動かし続ける費用はかかるので無料にはできませんが、月300円も頂く必要は無いと考えています。探していたときに高いと感じた金額を、そのまま自分が請求するのは筋が通らないからです。

もちろん、これも万能ではありません。スマホの電源が切れていれば分かりませんし、医療機器でも、119番の代わりでもありません。この記事で書いた方法と、組み合わせて使うのがいちばん確実です。

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2026年9月22日 公開